オレゴン州ポートランドにあるジョンデイダムは、多量の電気エネルギーを生んでいる。また、太平洋岸北西部からアジア地域、さらにその遠くへ向かう貨物を積載した船舶が通過するキーポイントともなっている。それゆえ貨物がここを通過できなければ、コロンビア川流域の海上交通はとたんに立ち往生してしまう。水門、つまり船舶用エレベータが壊れたダムは、数十億円の貨物に損害を与えかねない。コロンビア川には9つの水門があり、これなくして船は通過できない。船舶用エレベータは、ボタン操作一つで操縦できる。これで水位差のある水面間を行き来することができるのだ。この8カ月間、ジョンデイダムは間に合わせの修理でしのいできた。可動式のケーソン(エレベータの箱)を使って、船舶を通過させているのだ。これには大きな動力を必要とし、水門の3倍の時間を必要とする。ジョンデイダムの水門が開いたとき、修理の一部始終を追う。
今回の修理は別世界への旅、衛星打ち上げに挑戦する。このハイテク機器を宇宙へ運ぶには、12階建てビルと同じ高さのロケットと多量の火力を必要とする。そして打ち上げは、地球における遠隔地、フランス領ギアナで行われる。この南米に位置するフランスの海外県は赤道のほど近く、しかし現代世界からは遠く離れた場所にある。カウントダウンが始まったら、ライリーはすべてを見渡せる位置につく。ロケットが轟音をあげて飛び立つさまは、地球上で最も壮大な光景だ。
ハッチを閉じたら、体をしっかり固定しよう。今回は人間の生活にエネルギーをもたらす巨大風力タービンの建設に挑む。このモンスターマシンを組み立てるには、3つの巨大な部品を、高さ220フィートの塔に引き上げなくてはならない。部品一つの重さはエイブラムス戦車とほぼ同じ、部品すべてをつなげたときの長さはアメフトの競技場ほどになる。エネルギーの自給を切望するロードアイランド州ポーツマスのコミュニティのために、作業員たちが自然と格闘しながら、強風や高所作業をものともせず奮闘する様子を紹介する。
ライリーは、ダイバーの楽園と呼ばれるキュラソー島へ向かう。だか、今回の海中探検は休暇ではない。彼と一流の作業ダイバーチームは中国に向かう巨大な鉄鉱石運搬船、その船の50トンもの舵を引き上げるために集まったのだ。陸上での作業はお手の物のライリーでも、海中作業となると陸に打ち上げられた魚も同然。時間との闘い、失敗すれば金銭的被害も甚大だ。
ライリーが修理に出かけるのは、アメリカで唯一のソーラータワーのある場所だ。ライリーは65トンのボイラー2個を、高さ160フィートの2つの塔にそれぞれ引き上げ、なんと24,000枚のミラーパネルの上に吊るすのだ。一度手を滑らせたら最後、7年の不幸どころでは済まない不運が待っている。
これぞライリーが経験した中で最大の修理だ! 円形のトンネル構造は全長17マイル、70億ドルを投じて建設された。この大型ハドロン衝突型加速器(LHC)は、史上最大の粒子加速器だ。地下300フィートに設置された巨大実験装置は2つの国境にまたがっており、ビッグバンから10億分の1秒後の世界を再現することができる。これが宇宙の謎を解き明かすカギとなるのだ――壊れてさえいなければ。9カ月前、LHCが故障する瞬間を世界中の人が目撃した。最終段階に入ったLHCの修理現場と、人類の月面着陸以来最大となるサイエンス・アドベンチャーの再開をご案内しよう。
ライリーは乗車券を買い、人ごみにまぎれる。100万人の通勤客が急ぎ足で職場へ向かい、家路につく。これは、アメリカで5番目に大きな輸送機関の日常風景だ。電車は数秒間隔で次の目的地へ向かう。その舞台裏では、交通システムを24時間体制でスムーズに運行させるため、数千人の職員が大わらわで働いている。輸送管制をはじめ運転手、車両整備、電気系統担当、通信係といった人たちが、信じられないほど複雑なマトリックスで運行されている数千本の列車、バス、路面電車の監視、調整、修理を行う。