ボルネオ島は3つのプレートと2つの海洋が交わる場所に位置する。島を覆う熱帯雨林によって、世界屈指の生物の多様性を誇っている。特に密林を縫うように流れるキナバタンガン川流域は多様性、固有性に満ちた動植物を育んでいる。神格化されるクロコダイル、食虫植物のウツボカズラ、サルを狙うウンピョウ。トビヘビが空を飛び、密林には森の住人、オランウータンが暮らす。キナバタンガン川流域には今も自然の神秘が満ちている。
ボルネオ島の熱帯雨林は、たくさんの美しくも奇妙な生物たちを育んできた。遠くの山は霧に覆われ、キナバタンガン川の水は勢いよく氾濫原へ流れていく。50種を超える哺乳類と200種の鳥類、そして無数の昆虫類が生息する王国だ。だが気候の変動により時には飢えや暑さと戦わなければならない。どの生物も生きるために知恵を働かす。氾濫原では川が与える恵みによって生物たちは食料を得る。ここには自然の営みがある。
5万ヘクタール以上に及ぶキナバタンガン川・セガマ川流域は、原始の生態系が見られる一帯だ。雨季がやってくると、キナバタンガン川の水量は増し、下流へと押し寄せ、一方、海からは潮の満ち引きで海水が上流に上ろうとぶつかりあう。そんな環境で動物たちはメスを奪い合い、食料を探し求め、子孫を残す。樹上でも水中でも海中でも、それぞれが懸命に生きている。生を受けた命は、自らの力で生きる場所を獲得していくのだ。