宇宙に浮かぶ巨大望遠鏡

原題:Hubble’s Final Frontier

番組内容

★ナレーション:池田秀一(声優・俳優、代表作「機動戦士ガンダム」シャア役など)

地上から約650km上空の軌道を周回しているハッブル宇宙望遠鏡。無数の星の姿を映し出す最先端の窓となり宇宙の謎を解き明かしてきた。ブラックホールの存在、太陽よりも巨大な星々の最期、宇宙の膨張と崩壊の理論、ガスと塵の雲から星が誕生するメカニズム、木星に彗星が衝突する瞬間など、驚くべき新情報を提供してきた。ただ、大活躍のハッブル宇宙望遠鏡にも、残念ながら寿命がある。故障のため、ハッブルはらせんを描きながら地球にゆっくりと接近している。そこで、ハッブルに最後の修理を施すため宇宙飛行士が宇宙へ飛び立つことに。また番組では、2013年に打ち上げ予定のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡にも注目。ハッブルを数倍も凌ぐ高性能な望遠鏡に与えられたNASAのミッションを紹介する。

【ハッブル宇宙望遠鏡】
●ハッブル宇宙望遠鏡は世界初の宇宙望遠鏡。地球のおよそ650km上空を、97分に1回のスピードで軌道周回している。
●ハッブル宇宙望遠鏡は今、危機に瀕している。搭載されたメインのカメラと分光器(スペクトグラフ)が機能しておらず、さらに望遠鏡の向きを設定するジャイロスコープという装置にも支障が出てきている。
●重さ12t、スクールバスに匹敵する大きさの望遠鏡は、螺旋を描きながら地球へと向かって徐々に落下しつつある。
●ハッブルが送ってくる画像データの色は白黒。その白黒画像に、ハッブルの器具によって検出される元素に従って専門家が色をのせる。48枚の画像データを組み合わせてできた“カリーナ星雲(りゅうこつ星雲)”の制作には、およそ1年が費やされている。
●2013年に打ち上げ予定の“ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡”が、ハッブルのミッションを引き継ぐ。ハッブルをしのぐこの望遠鏡は、月の軌道を越えた地球と月と太陽の重力が微妙なバランスを保つ地点に配備される。

【ハッブル宇宙望遠鏡、偉大な発見】
星の形成
●地球から約6,500光年のかなたにあるワシ星雲を発見。画像データには、ガスと塵でできた3本の巨大な柱が写し出されていた。天文学者は初めてそれらの柱に“蒸発ガス状小球大群=通称エッグス”と呼ばれるガスの小さなかたまりがあることを知る。しかも、いくつかのエッグスの内部では星が形成されつつあった。
●エッグス内部の星の形成で生じるガスとちりの平たい円盤は、原始惑星体(プリプロット)と呼ばれる。これらの円盤が非常に熱くなり核融合を生じると恒星が誕生する。
●星の形成時には、誕生間もない星の外周軌道にのって太陽風から身を守る、より小さな塊が副産物として生まれる。これらは新しい惑星となり、新しい太陽系の起源となる。

星の最期(超新星)
●りゅうこつ星雲は、いくつかの星が誕生すると同時に、少なくとも1つの星が消滅する場でもある。核融合の燃料を使い果たすと、星は膨張し、やがて重力で抑えきれなくなりガスを放出するのだ。そして星の膨張に従い、中心部に残る酸素と炭素からなる高温の球体を“白色矮星”と呼ぶ。
●遠い未来、我々の太陽は現在の大きさの何100倍にも膨らみ、巨大な赤色星へと発達する。地球では海が蒸発し、表面の温度は1000度以上にまで上昇、地球上のすべての生命が滅びる。高温のガスは地球を焼き尽くし、太陽系を一掃して宇宙へ放出される。惑星や衛星はすべて消滅、後に残るのは数千光年先で輝く一点の光のみ。
●星より大きく、星より寿命は短く、そして星よりさらに激しい最期を迎える。この爆発が、スーパーノヴァ=超新星のこと。ただし、すべての種類の星が超新星のごとく爆発するわけではない。
●超新星爆発が起こると、星の内核は崩れ針先よりも小さな一点に凝縮される。これを専門用語で “特異点”と呼ぶ。特異点は体積がゼロの領域だが、爆発前の星が持つ重力の大半を保持している。
●“かに星雲”は1054年に起こった超新星からの残骸で、現在も拡大し続けている星雲。古代中国の天文学者によって初めて記録されている。1千年前の超新星爆発で飛び散った破片は、今も宇宙空間を時速500万km近い速度で拡大している。
●血液中のヘモグロビンに含まれる酸素や鉄分から、結婚指輪の素材である金も、私たちの骨のカルシウムまで、宇宙にあるほとんどの成分は超新星によって作り出されたもの。
●宇宙にある、水素やヘリウムより重いほとんどの成分は星によって作られている。ハッブルの超高解像度の画像によって、かに星雲のフィラメントにとても重い成分が含まれていることが判っている。
●太陽の100倍以上の質量をもつりゅうこつ座のイータ星を発見。通常、質量が大きいほど温度は高いものだが、イータ星の表層温度も非常に高く、自らが発生するガスを保持できないほど。そのため恐らく100万歳ほどの若いイータ星はあまりに大きく不安定なため、寿命は短いだろう考えられている。
●あらゆる星は内側へ向かう重力と外側へ放出する熱の圧力との絶妙なバランスをとりながら核融合を起こしている。

【ブラックホール】
●ブラックホールとは、超新星爆発の残骸。とてつもなく巨大な星のブラックホールは、太陽の少なくとも4倍の大きさ。星が超新星で爆発するとき、中心部はバラバラになり、付近の重力場は光さえ逃がさないパワーになる。例えば放射エネルギーを放出した場合光の粒子は後退しようとするが、ブラックホールの重力に吸いこまれ見えなくなるのだ。
●ブラックホールを説明した最初の理論は、重力の作用から解説したアインシュタインの一般相対性理論。例えば、とてつもなく巨大で超高密度な物質を集め、そこに強烈な重力を加えると、その重力が光をも吸い込む空間領域を作り出す。この領域こそがブラックホールの概念。
●実際ブラックホールは目に見えないが、周辺に与える影響力でその実態が浮き彫りになる。
●銀河の中心にある星のパターンを捉えたハッブル宇宙望遠鏡の画像によって、ブラックホールの存在を説明したアインシュタインの相対性理論は正しかったことが証明された。

【暗黒物質、ダークエネルギー、宇宙膨張】
●暗黒物質とは、宇宙創成期からある広大な宇宙をくっつける接着剤の役割を果たす物質。ハッブル宇宙望遠鏡はこの暗黒物質の存在を確認し、同望遠鏡のコスモス・プロジェクトで得たデータから歴史上初となる三次元空間分布が作成された。
●暗黒物質の大群は、星や銀河が生まれるところに存在する。暗黒物質は物質を引き付ける重力を持っている。
●私たちの日常生活にある物質のほぼ5倍の物質量が宇宙にあふれている。宇宙に存在する暗黒物質と地球上の物質の総量を合わせても、宇宙全体の全質量の3分の1にしかならない。
●宇宙はますますしかも急速に拡大し続けていることがハッブルの証拠により判明している。これは、まだ人類が目にしたことのないダークエネルギーと呼ばれる力が拡大と加速を促しているのかもしれない。