ナショナル ジオグラフィック

コラム

第4回
コウテイペンギンの子育て

体型も色もみんな同じ。個体識別はおろかオスとメスの区別も難しいですが、声は千差万別です。

『ペンギン・ライフ』より

南極大陸に生息するコウテイペンギン。ペンギンの中で最も大きく、全長は130cmにもなるそうです。夏は海で生活し、南極の秋になると産卵に向けて海から上がり、50km以上も氷の大陸を渡り歩き、集団で繁殖地を目指します。これほど遠く離れるのは、海岸近くの天敵から身を守る為と考えられています。

繁殖地に着いてメスが卵を産むと、メスは疲労した体に栄養を与える為、今度は海を目指し、再び長い時間をかけてエサを摂りに行きます。

泳ぐスピードは時速10〜28キロ。岸から160キロの海域で狩りをすることもあります。

『ペンギン・ライフ』より

そして、ここから卵を温めるのはオスの仕事なのですが、足の上に卵を乗せ、オスはなんと約60日間飲まず食わずで温めるのだそうです。60日間です。60日間。その間、雪を口にすることはあるようですが、ほとんど絶食状態です。いや、繁殖地へ向かう途中も食べていないことを考えると60日以上です。卵を温めている間、オスはエネルギーを消費させないよう、ほとんど眠る様に過ごすのだそうです。

60日程たってヒナが孵る頃、栄養を蓄えたメスが海から戻って来て胃に貯めた食べ物をヒナに与えます。ここでやっと交代です。

無事にヒナを孵したオスはここから食事を摂る為に、海を目指します。この時、オスの体重は40%近くも減ってしまうようです。そして驚くことにオスの絶食期間は、繁殖地までの移動と再び海を目指す移動期間を含めると、120日間程にもなるそうです。凄過ぎます。120日間です。我々ヒトに置き換えると、とうてい無理です。凄まじい子育てです。

コウテイペンギンは巣を持ちません。

『ペンギン・ライフ』より

120日ぶりに食べるというのはどのような感覚なのでしょうか。せめて胃に優しいものから食べて欲しいと思ってしまいます(我々でいうおかゆの様なもの)。

このように、マイナス60℃にもなる厳しい環境で、約120日間にも及ぶ絶食の中、子供を育てることからコウテイペンギンの子育ては「世界一過酷な子育て」と呼ばれています。

コウテイペンギンの父鳥は献身的に子育てをします。メスは卵を抱かない?それがコウテイペンギン。

『ペンギン・ライフ』より