“黄金の三角地帯”と呼ばれる東南アジアの山深い国境地域はヘロインの原料となるアヘンの一大生産地だ。1970年代後半、そこを拠点とする世界屈指の麻薬王クンサーが高純度で依存性の高い“チャイナホワイト”を密輸し、アメリカにヘロインが蔓延する契機となった。30年近く暗躍してきたクンサーが築き上げた帝国を切り崩すべく、麻薬取締局は特別捜査チームを組み、国際的な作戦を敢行する。果たして、作戦は成功するのだろうか。
ベトナム戦争末期の1970年代、退役軍人であるアイク・アトキンソンはタイに滞在していた。アトキンソンは、麻薬の売人として成功を収めていたフランク・ルーカスと手を組み、大量のヘロインをニューヨークへ密輸することに。軍の輸送機や人員を利用し、高純度のヘロイン“チャイナホワイト”をアメリカへ送るルートを確立させる。そうしてアメリカに渡ったヘロインは、ベトナム戦争から帰還した兵士たちへ売りさばかれるのだった。
ソ連のアフガニスタン侵攻で幕を開けた紛争は麻薬密輸組織にとって千載一遇のチャンスだった。故郷シチリアを追われたマフィアのバダラメンティはパキスタンの麻薬密売人と手を結び、良質なヘロインをアメリカへ送り込む巨大密輸網を築き上げる。莫大な利益を生むこの“ピザコネクション”を断ち切るべく、FBIと麻薬取締局は通信傍受作戦を展開する。戦禍と麻薬産業の関係や米国政府の思惑など、歴史背景と共にその裏側を描く。
2001年9月11日、アメリカの麻薬取締局に勤務するジェフ・ヒギンズはニューヨークでテロの惨禍を目の当たりにした。その後、アフガニスタンに赴任し、麻薬とテロのつながりを断ち切るべく奮闘することに。ヒギンズが追っていたのは“世界一のヘロイン商人”と呼ばれるハジ・バッチョ。バッチョは世界のヘロイン供給量の2割を取り扱っていた。ヒギンズは、麻薬王を逮捕し、アメリカで法の裁きを受けさせることができるのだろうか?
大量の薬を処方する診療所“ピルミル”。アメリカ最大のピルミルを経営するクリス・ジョージは、フロリダの医師免許法を悪用して数百万ドル規模のビジネスを構築する。ジョージの経営するクリニックである“アメリカン・ペイン”では、わずか2年間のうちに、アメリカ全土からフロリダを訪れる何万人もの依存者たちに2000万錠を超えるオピオイド錠を売りさばいてきた。ついにFBIがアメリカン・ペインを潰すべく、動き出す。
2021年、アメリカで合成オピオイドによる死者が5万人を超える。その多くは強力な麻薬性鎮痛薬フェンタニルによるものだ。かつてメキシコのカルテルが製造し、シカゴのギャングによりアメリカに広まっていたフェンタニルだったが、現在その供給を担うのは、メキシコ史上最も残忍なカルテルのリーダー、エル・メンチョ。残虐な行為を繰り返しながら、同時に大量のフェンタニルを作り、今日もアメリカを破壊し続けている。