長さ446キロメートルにわたって延びる巨大な渓谷、グランド・キャニオン。コロラド川をはさんでそびえる南北の岩壁には、18億年前の地層がのぞく。標高差が大きい地形は多様な生態系を支えている。標高2700メートルの高地では珍しいカイバブリスが松林を駆けまわり、谷底では固有種のガラガラヘビが川を泳いで移動する。そして岩壁のくぼみでは、絶滅が危ぶまれるカリフォルニアコンドルのヒナが大空に飛び立つときを待っている。
シエラネバダ山脈のふもとに広がるヨセミテ国立公園。ダイナミックな花崗岩の断崖や緑豊かな草原、高さ90メートルの巨木の森など、変化に満ちた自然が楽園のような世界を織り成している。そこに住む生き物たちも多様だ。森ではアメリカクロクマやコヨーテがうろつき、渓谷ではシエライモリが冒険の旅に出る。また草原ではカマキリのメスが死のデートにオスを誘う。シエラネバダ山脈の雪解け水が育むユニークな自然を紹介する。
メキシコとの国境を成すリオグランデ。この川が大きく湾曲した部分に位置するのがビッグ・ベンド国立公園だ。広大なチワワ砂漠の中にあり、公園内にチソス山脈全体が収まる。オオミチバシリやツノトカゲなど、ここに住む生き物の多くが砂漠の環境に適応しているが、アメリカクロクマやビッグホーンのようにモンスーンの雨に頼って生きるものもいる。またビッグ・ベンド国立公園は美しい星空が見られる場所として世界的に有名だ。
風雨の浸食が生んだ荒野に象徴されるバッドランズ国立公園。捕食動物の侵入を阻む険しい渓谷は、ビッグホーンの理想の住みかだ。渓谷の周りには豊かな草原が広がっている。そこではプレーリードッグがガーデニングに励み、バイソンが草を肥料に変え、フンコロガシが糞をリサイクルする。動物たちは、それぞれのやり方で生態系を支えているのだ。色とりどりの地層が織りなす7500万年の物語は、今も絶え間なく続いている。
ハワイ島の2つの活火山を中心に広がるハワイ火山国立公園。火口では溶岩が煮えたぎり、噴気孔から有毒ガスが漏れだしている。この極限的な環境にも生命は存在する。冷めた溶岩に根をおろすオヒアレフアの森は、珍しい鳥や昆虫の楽園だ。また沿岸の海には、豊富なプランクトンを求めてマンタが集まり、アオウミガメやザトウクジラが繁殖のために帰ってくる。美しい自然は、愛と調和を重視するハワイの人々によって支えられている。