60年代、ヒッピーたちのドラッグ・カルチャーの中心地だったサンフランシスコ。近年はメキシコのカルテルの進出が目覚ましく街には安価なメスがまん延している。メスを愛用するゲイのコミュニティーではHIVへの感染が拡大。全米で最も治安の悪い地域の1つと言われるテンダーロインには州内の刑務所には収容しきれないほどのドラッグユーザーがあふれている。彼らの更生をサポートする保護観察の取り組みも紹介する。
巨大IT企業を生み出したイノベーションの街 シアトル。ワシントン州では2012年に嗜好品としてのマリファナの使用が合法化され、マリファナ市場が盛況だ。一方、シアトル市警はドラッグディーラーや常習者の更生を支援する新たなプログラムを導入。音楽やダンスシーンなど流行に敏感な若者の間では“モリー”の愛称で知られるMDMAの人気が高い。ネットを駆使し闇サイトでドラッグを売買する若者の姿なども追う。
全米で4番目の人口を誇るテキサス州ヒューストン。ドラッグを求める人々は治安の悪い地区に出向きクラックなどを買う。ヒスパニック系の多い大都会にはメキシコのカルテルが手を伸ばしやすい実情も。国境付近から市内へ通じる国道ではドラッグの密売が横行。1990年代に地元出身のヒップホップグループが全国に広めたドラッグ「シロップ」は咳止めを混ぜて作ったドリンクだ。こうした処方薬の乱用を憂慮する捜査官たちの姿も追う。
カリブ海に浮かぶ島国ジャマイカ。レゲエが流れる美しいビーチ、モンテゴベイはパーティー好きな若い観光客向けのエクスタシーが売れている。首都キングストンでは、ギャング集団の縄張り争いが激化。ギャングのドンが貧困に苦しむ住民を金銭的に支援しているという側面もある。気候が温暖でマリファナの栽培も盛んなジャマイカでは、マリファナタバコをドラッグではなくハーブの一種だと捉え気軽に吸う者が街中にあふれる。
アメリカ中西部最大の都市、シカゴ。人口が多くドラッグの需要が多いこの都会ではヘロインの過剰摂取が深刻な社会問題と化している。メキシコ系のカルテルはここを拠点に、中西部の各都市へ販売網を拡充。縄張り争いが激化し殺人事件も多発する市内から郊外へ拠点を移し、マリファナやコカインなどを新たに売るディーラーも登場。クッシュと呼ばれるマリファナとエクスタシーを併用する若者が増え、市場の勢力図が変わりつつある。
2012年11月、嗜好品としてのマリファナの購入を認める法案が可決されたコロラド州。これまで違法なドラッグ市場を牛耳って来た地元ギャングやメキシコ系のカルテルは苦戦を強いられ、ヘロインやコカインなどに活路を見出している。マリファナの聖地として注目を浴びる州都デンバーでは、マリファナ関連のイベントが盛大に開かれる。2014年1月の法施行を目前に、マリファナビジネスに期待を寄せ、胸を膨らませる人々の姿に密着する。
リゾート地として絶大な人気を誇るフロリダ州マイアミ。美しい海と砂浜を前に人々は夜通しパーティーに興じコカインを楽しんできた。しかし警察の取り締まりが強化された影響で、コカインの流通量は激減。ディーラーたちは苦境に立たされている。そうした中、新たに注目されているのがマリファナだ。郊外の住宅街でひっそりと自家栽培がおこなわれ、街なかに安価なマリファナが大量に出回るようになった背景を追う。
東海岸で2番目に大きな大都会ペンシルベニア州フィラデルフィア。北部のケンジントンはドラッグがはびこる“バッドランズ”と呼ばれ、東海岸一帯のヘロインのメッカと化している。世界の工場と呼ばれて栄えた街は今、仕事にあぶれドラッグビジネスに手を染める貧困層であふれかえる。一方、エンジェル・ダストなどと呼ばれ人気が高まっているPCP。常習者を奇行に走らせるこの新手のドラッグの問題にも焦点を当てる。
カントリー音楽の都、テネシー州ナッシュビル。街の周囲に広がる森林地帯では地元ディーラーが“地産地消”のマリファナを栽培。売れないミュージシャンたちはそのマリファナの密売で生計を立てている。周囲では自家製メスの製造も盛ん。予算カットに苦しむ地元警察はその費用を賄うべく、逮捕者の車や現金などを押収している。近郊では薬局の襲撃事件が相次ぐなど処方薬の乱用が深刻になり、街のドラッグ市場は変わりつつある。
メキシコとの国境からほど近いアリゾナ州フェニックスは麻薬組織シナロア・カルテルの一大拠点地だ。街からはマリファナ、ヘロイン、メタンフェタミンが国中に運ばれ、カルテルの手下たちが輸送や資金洗浄などの仕事でもうけている。郡の保安官たちは砂漠を歩いてマリファナを運ぶバックパッカーたちを逮捕。国中へ流れていくドラッグがフェニックスに入るのを阻止すべく最前線で日々奮闘している。