海のシルクロードをたどる旅は中国から始まる。明朝の武将、鄭和(ていわ)に率いられた大船団の中心をなす巨大な木造船「宝船(ほうせん)」はどのように造られたのか、当時の技術に迫る。次に世界で最も危険な海域の一つ、マラッカ海峡で、海上警備や水先案内、ハイテク化された港の荷役作業に立ち会う。大船団の痕跡が残る港町マラッカは、交易で栄え、多様な文化や宗教が交じり合うことで生まれた独自の生活スタイルが今も受け継がれている。
かつてコショウの交易で栄えたインド西岸の港コーチを訪れる。中国伝来の漁法や、紀元前から存在するというユダヤ人のコミュニティーなど、人々の交流の歴史が今も刻まれている。続いて、イスラム世界との関係が深い中国の広州を出港し、東西交易の中心地ドバイに赴く。中国系の巨大なショッピングモール、世界有数の競走馬の施設などを訪ねつつ、多様な人脈を求めて、あるいは商売のために、海を渡り世界中から集う人々に出会う。
中国の広州では、アフリカからの移民が増加し、彼らの文化が根付き始めている。一方、アフリカの東海岸では、古来、海上交易によってスワヒリのような混成文化が形成されてきた。中国から海を渡ってきた人々の痕跡は、住民の文化や海中の難破船などに今も残る。旅の最後に、東西の海を結ぶスエズ運河を通ってヨーロッパ世界に赴く。港として活性化しつつあるギリシャのピレウスや輸出増加を目指すオリーブ畑に、拡大する中国経済の影響力を感じながら、南京に帰港し、旅を締めくくる。