21世紀のディーヴァがアレサの名曲の数々を大熱唱
主人公アレサ・フランクリンを演じるのは、ブロードウェイ・ミュージカル『カラー・パープル』でトニー賞、グラミー賞、エミー賞と米エンタメ界の主要アワードを総なめにしたミュージカル界のトップ・スターであり、映画『ハリエット』ではアカデミー主演女優賞にノミネートもされた映画女優でもあるシンシア・エリヴォ。日本でも来日コンサートを果たすほどファンが多い。このマルチな才能を持つ21世紀のディーヴァが、本作では全エピソードに渡ってアレサの名曲を大熱唱する。少女時代からアレサの大ファンであり、その音源や映像を徹底的に分析して撮影に臨んだというシンシア。そんな彼女がアレサになりきって歌う名曲『貴方だけを愛して』や『チェイン・オブ・フールズ』、『セイブ・ミー』などの気迫に満ちたパフォーマンスは圧巻だ。
衝撃と感動。栄光の影に隠れた知られざる苦難の物語
12歳の頃から歌い始めたゴスペル音楽の世界で天才少女と呼ばれ、18歳で大手コロムビア・レコードと契約してデビューを果たしたアレサ。だが、当時のアメリカ社会は人種差別や女性差別が当たり前のようにまかり通った時代。加えて、世間から尊敬される立派な牧師であり娘の才能を後押しする良き父親であると同時に、酒と女に溺れて妻に暴力を振るう矛盾した人格の父C・L・フランクリンとの愛憎半ばする複雑な関係や、10代での望まぬ妊娠・出産と子育て、支配欲の強い最初の夫テッド・ホワイトから受けた精神的・肉体的な暴力など、幾多の試練が彼女の行く手に立ちはだかる。その一方で、アレサの抜きん出た才能を信じて彼女を支え続けた祖母や姉妹、兄弟たちとの深い愛情と堅い絆が彼女を鼓舞させる。次々と明かされていく衝撃的な真実と感動的な逸話の数々。その中でアレサは何を感じて考え、どうやって困難を克服し、唯一無二の偉大な「ソウルの女王」へと上りつめたのか。文字通り魂を揺さぶるようなドラマが描かれる。
浮かび上がる激動の時代。今だからこそ語られるべき物語
アレサがスターへの階段を上りつめた60~70年代は、ベトナム反戦運動や公民権運動、ウーマンリブなどが全米各地で盛り上がり、アメリカ社会に大きな変革の嵐が吹き荒れた時代。音楽業界に革命を巻き起こしたアレサもまた、差別を経験して育ったアフリカ系アメリカ人の女性として揺るぎない信念を持ち、自らも社会運動に深く関わっていくこととなる。本作ではマーティン・ルーサー・キング・ジュニアやアンジェラ・デイヴィスといった公民権運動家から、キング・カーティスやカーティス・メイフィールドなどのミュージシャンに至るまで、実際にアレサと親交を深めて互いに影響しあった実在の人物たちが多数登場。21世紀の今にも通じる混沌とした激動の時代にあって、アレサがアメリカ社会をどう見つめて何を訴えようとしたのか、その内面へと肉薄していく。
ピューリッツァー賞に輝く気鋭の劇作家など、スタッフにも黒人女性が多数参加
映画界の巨匠ロン・ハワードと製作者ブライアン・グレイザーが生み出した『ジーニアス』シリーズ。『アポロ13』や『ダ・ヴィンチ・コード』などを大ヒットさせたこの名コンビに加え、今シーズンではアフリカ系アメリカ人女性として史上初めてピューリッツァー賞の戯曲部門に輝いた劇作家スーザン=ロリ・パークスが、番組の総責任者であるショーランナー及び製作総指揮・脚本を務めている。数多くのブロードウェイ舞台劇を手掛けてきたパークスは、スパイク・リー監督の『ガール6』やラシド・ジョンソン監督の『ネイティブ・サン~アメリカの息子~』、そして本年度アカデミー賞の主演女優賞(アンドラ・デイ)候補にもなったジャズ歌手ビリー・ホリデイの伝記映画『The United States vs. Billie Holiday』などの脚本でも有名。そのほか、監督のニーマ・バーネットや脚本家チームのダイアナ・サンにベッキー・モードなど、大勢の黒人女性が主要スタッフに加わった。なお、低迷期のアレサを救ったアリスタ・レコードの元社長クライヴ・デイヴィスも製作総指揮に参加している。
エピソード
第1話
「 リスペクト (原題: Respect)
」
幼い日、アレサは父C・L・フランクリンの巡回説教の場で歌いその歌声で喝采をあびる。1967年。ヒットに恵まれないアレサは、最後のチャンスと考えアトランティックレコードでアルバム録音に挑むものの、レコーディングは夫、テッドの独占欲で失敗に終わる。だが、プロデューサーのジェリー・ウェクスラーは諦めず連絡してくる。父の紹介で敏腕マネージャーのルースが付き、ついに大きなステージに立ち、ソウルの女王になる。
第3話
「 正しい行い (原題: Do Right Woman)
」
ソウルの女王の称号を得て多忙を極めるアレサ。公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング牧師がテレビで話すのを見たアレサは、自分もできることで協力すべきだと考える。赤ん坊を産んだ幼いアレサはしばらく歌から遠ざかっていたが、父の教会の聖歌隊の新しい指揮者ジェームズ・クリーブランドと出会い、ゴスペル巡回に復帰する。ゴスペル歌手だったサム・クックがポピュラー音楽を歌うライブを観て大いに刺激を受ける。
第4話
「 忘れられなくて (原題: Unforgettable)
」
アレサは「タイム」の取材を受ける。表紙を飾るも掲載された内容はスキャンダラスなものとなっていた。それが原因でテッドとの仲が最悪となり、納得した歌も歌えなくなってしまうアレサ。ついにテッドとの離婚を決心する。アレサが生まれる前、C・Lと妻のバーバラはナッシュヴィルで布教生活を送っていた。だが、C・Lが少女を妊娠させるという事件が。C・Lを家から追い出したバーバラだったが、アレサが生まれ懺悔するC・Lを許す。
第5話
「 プロテスト (原題: Young, Gifted And Black)
」
テッドと別居を始めたアレサは、ケン・カニンガムと出会う。黒人の人権問題の事件や活動家に刺激されプロテストアルバムを作ると宣言する。政治色の強さを懸念するジェリーに対し、アレサはアルバムにプロデューサーとしてクレジットされない憤りをぶつける。アルバムは大ヒットする。アレサが9歳の時、バーバラはC・Lの浮気に耐えられず、子供たちを連れて行くことを許されないまま1人で家を出る。ある日、母の訃報が届く。
第6話
「 アメイジング・グレイス (原題: Amazing Grace)
」
アレサはクリーブランド牧師を訪ね彼の教会でゴスペルのライブアルバムを作りたいと伝える。C・Lの教会を使わないことを心配する彼に父親に関わってほしくないと訴える。ジェリーはアルバムには賛成するももっと大きな教会での録音、さらに映画化を提案する。ライブは成功し、不朽の名盤「アメイジング・グレイス」が世に出る。第2子妊娠をC・Lに知られたアレサは退学させられ、C・Lの教会で初アルバムのレコーディングをする。
第7話
「 チェイン・オブ・フールズ (原題: Chain of Fools)
」
音楽の流行はディスコへと移るがアレサはスタイルを変えない。そんな時、ジェリーがアトランティックを去る。アルバムが売れずに焦るアレサは妹のソロのチャンスを奪ってしまう。アレサは俳優業にも進出、演技レッスンでグリンと知り合う。確実と言われたグラミー賞を逃し落ち込むが、グリンにアリスタの創設者クライヴに紹介される。音楽と改めて向き合うアレサはディスコソングのライブを成功させる。同じ頃、C・Lは強盗に襲われる。
第8話
「 誰も眠らずに (原題: No One Sleeps)
」
アレサは昏睡状態の父を看病しながらどれほど大きな存在かを知る。2度目の離婚と父の死という大きな喪失を抱えながらも、キャリアを前進させようと音楽的に新しいチャレンジを試み、成功を収める。アリスタ・レコードに移籍し、プロデューサーのクライヴ・デイビスの協力のもと、順調に成功を収めていくアレサ。そして第40回グラミー賞授賞式での伝説的なパフォーマンスで「ソウルの女王」としての存在感を確固たるものにする。