時空を超える「想像の宇宙船」に乗り、過去や未来の世界へ科学的探究の旅に出る。人類はなぜ、宇宙の謎を解き明かしたいと思うようになったのか。宇宙誕生から現在までを1年に凝縮した「宇宙カレンダー」で、生命がDNAのはしごを伸ばしながら進化し、人類が出現するまでをたどる。さらに、人類が科学を使って宇宙を知り、探査機を飛ばすようになるまでの知性と精神の発展の道のりや、未来の超小型探査機計画について考察する。
生命に必要な液体の水が存在できる「ハビタブルゾーン」。太陽が年老いると地球はこの恩恵を受けられなくなり、人類は新天地を求めて太陽系内さらには太陽系外へと旅立つだろう。かつて伝統的航海術を使って未知の海に漕ぎ出し、太平洋の諸島へと移り住んだポリネシアの人々のように。そのためには遙か遠くの惑星を詳細に観測できる重力レンズ望遠鏡や、光速を超えて航行する理論が必要だ。宇宙の大航海時代へ思いをはせる。
今回は、生命の起源の謎を探る旅に出る。原始の地球の海底にあった、自然が作った塔が並ぶ「都市」で始まった岩石と生命の協力関係に迫る。塔の穴の中に有機分子とかんらん石などの鉱物がたまり、最初の生命が誕生した。さまざまな学問分野を統一してかんらん石の研究をした、地球化学の創始者ゴルトシュミットの半生をたどる。最新の観測データから、海底に「都市」があると推測される土星の衛星エンケラドスでも、生命誕生について考察する。
1万2千年前に農耕を始めた人類。その歴史は飢饉との闘いでもあった。農家は経験的に病気や干ばつに強い交配種を作ってきたが、ダーウィンが進化のプロセスを、メンデルが遺伝のメカニズムを解明。農業は科学になった。ロシアの植物学者ニコライ・バビロフは遺伝学を活用し饑饉を終わらせることを目指すが、スターリンの独裁や戦争に翻弄されて理不尽にも獄死。科学に命を懸け、最後まで信念を貫いた研究者たちの姿を紹介する。
脳は人間の中にある小さな宇宙だ。人類は宇宙への理解を飛躍的に深めているが、自分自身の脳への理解は始まったばかりだ。近代、脳の活動が調べる科学技術が発達し、夢や言語に関する脳の機能の解明が進んでいる。古代に神の仕業と信じられていた「てんかん」の原因も、医学的に説明できるようになった。今後は、最先端技術による脳の神経回路地図「コネクトーム」の作成を通じて、人間の小宇宙への理解がさらに深まるだろう。
かつて、夜空の星々はただの明るい点で惑星を持つ太陽系は特別だと考えられていた。しかし18世紀後半アマチュア天文家のグッドリックは変光星の観察から遠くの惑星の存在を推測。20世紀になると天文学者のカイパーや化学者のユーリーらが各々の手法で太陽系や生命の起源を考察するようなる。科学と一般社会の垣根を取り壊すことに力を注いだのが2人に師事したカール・セーガンだ。今回は冷戦中の宇宙開発競争も主導した彼らの功績を紹介する。
人類は、地球外知的生命体とのファーストコンタクトでは、記号言語を使って意思の疎通を図ることになるだろう。実は地球には人間以外にも記号言語を使う知的生命がいる。ミツバチは、「ダンス」という記号言語で仲間にエサのありかを伝える。ミツバチのダンスは、方角、距離、風速なども伝えられる高度な情報伝達手段だ。新しい巣に群れで移動する場合も、ダンスを使って意見を伝え合い、群れ全員の意見が一致した巣を移動先に決定する。
科学者にはガリレオやアインシュタインのようにそれまでの常識を覆すような発見をする者と、華々しさはなくても重要な発見で謎の隙間を埋める者の二種類がいる。イタリアの天文学者カッシーニは後者のタイプだ。彼の名を冠した探査機は長年にわたり様々なデータを集め2017年に役目を終えた。人類初の月面着陸を成功させたアポロ11号開発の裏にも歴史に埋もれた理論があった。その提唱者コンドラチュクの悲劇的な人生をたどる。
古来からニュートンをはじめ多くの偉大な科学者たちが取り組んできた、光の性質を解明する研究から、19世紀末、「量子力学」が誕生し、これまでの物理学の概念を覆す未知の世界への道が開かれる。古典物理学の法則が当てはまらない量子の世界は、矛盾した奇妙な法則で支配されている。量子力学には現在も解明されていない謎の部分が多いが、「量子暗号」や「量子時計」など、その理論を応用した最先端の科学技術が開発されつつある。
長い間、物質の最小単位と考えられてきた原子。私たち人類をはじめ万物を形づくる原子はもともとは遠い宇宙の恒星で生まれたものだ。原子の中にさらに小さな原子核や電子があることが分かってから、人類は様々な研究を進めてきた。キュリー夫人は原子核が持つ「放射能」を発見。その莫大な力はSF作家を刺激し、ナチスを警戒する科学者たちを勢いづかせた。恐怖が連鎖する世界で取り返しのつかない道へ進んだ科学者が後世に訴えることとは…。
人間と他の生き物に違いはあるのだろうか。人間以外の生き物には意識や感情はないのだろうか。実はほかの動物にも、人間にしかないとされていた特質、例えば仲間を思いやる心や、自己犠牲を払い家族を救おうとする気持ちがあることが分かっている。人類が戦争や殺戮を繰り返すのは遺伝子で定められた人間の本質だとされているが、古代インドの残虐な暴君アショーカ王が改心したように、人は変わることができるのかもしれない。
これまで地球では5回の大量絶滅が起こった。6回目は人類が原因となると考えられ、「人新世」という地質年代の名前が提唱されている。人新世の始まりは、農業の開始か、繰り返す核実験か。人類が地球の環境を変えるきっかけは複数あった。ギリシャ神話に登場する悲劇の予言者カッサンドラのように、科学者たちは正確に未来を予測し、警告を発してきた。その結果オゾン層の破壊が食い止められたように、地球温暖化が進む未来を人類は変えられるだろうか。
想像の宇宙船に乗り、過去と未来のニューヨーク万国博覧会へ旅立つ。カール・セーガンが訪れた1939年、ニール・タイソンが訪れた1964年の万博では、暗い世界情勢にも関わらず、人々は最先端技術を通して未来への希望を抱いていた。2039年の万博では架空の科学技術を体験しながら、宇宙の歴史の中での地球と生命の尊さを認識。そして、人類が科学の力を正しく使って地球の生命と共存し、宇宙市民である自覚を深めることの重要性を訴える。