ナショナル ジオグラフィック

フリーソロ

原題: Free Solo
フリーソロの写真

番組内容

米アカデミー賞、英国アカデミー賞、エミー賞受賞作
身体を支えるロープや安全装置を一切使わずに山や絶壁を登るフリーソロ・クライミングのスーパースター、アレックス・オノルドには、途方もなく壮大な夢があった。それは巨岩エル・キャピタンに挑むこと。この危険な断崖絶壁をフリーソロで登りきった者は、かつてひとりもいない。「いつ死ぬかわからないのは皆同じ。登ることで“生”を実感できる」と言い放つアレックスは、その前人未踏の偉業を成し遂げるため準備に取りかかる。第91回アカデミー賞® 長編ドキュメンタリー賞受賞をはじめ、第71回エミー賞7部門受賞、2018年のトロント国際映画祭観客賞、2019年の英国アカデミー賞を受賞(共にドキュメンタリー部門)など、多数受賞の快挙を達成したドキュメンタリー超大作。

予告編

■120分

ストーリー2016年、春
伝説的な絶壁エル・キャピタンには、あらゆるクライマーが怖じ気づくほどの難所がいくつもあった。アレックスはフリーライダーと呼ばれる約975メートルのルートを攻略するには“正確な地図”が必要だと考え、憧れの存在であるベテランのプロクライマー、トミー・コールドウェルとともに現地でのトレーニングを開始する。実際にそのルートを登ってみると何が起こるのか。どのポイントが最も恐ろしいのか。その具体的なイメージを掴むため、ロープを使って登攀を試みるアレックスだったが、途中で「足を痛めた。パンパンに張って、手も痛い」と手強い感触を打ち明ける。プロクライマーとして成功を収めた後も家を持たず、移動手段でもある愛車のバンで寝泊まりしているアレックスには、サンニ・マッカンドレスという恋人がいる。「一世一代の大きな挑戦を前にしたら、恋人よりそちらを優先させる」と考えるアレックスにとっても、明るい性格のサンニは「彼女は僕の人生を豊かにしてくれる」というかけがえのない存在だった。

2016年、夏
エル・キャピタンへの挑戦に備え、アレックスはモロッコのタギアでの練習に励んでいた。彼に同行するジミー・チンは「MERU/メルー」などの山岳ドキュメンタリーで知られる映像作家で、彼が率いる撮影チームは全員が熟練のクライマーだ。2009年からアレックスと交流を深めてきたジミーは、究極の夢に向かって突き進むこの友人の勇姿をカメラに収めようとしていた。ジミーが語る。「フリーソロの撮影には葛藤が付きものだ。ソロは非常に危険だし、撮ることでプレッシャーを与えてしまう。滑落の瞬間を捉えてしまうかもしれない。最悪のシナリオを想定し、葛藤を抱えながら撮影に臨まなければならないんだ。」

2016年、秋
エル・キャピタンに戻り、練習に明け暮れるアレックス。そんなある日、序盤の難所フリーブラストから9メートル下に滑落した彼は、足首に捻挫を負ってしまう。これがサンニと付き合い始めてから2度目のケガだった。常人には理解しがたい危険を冒し、完全なる達成感を追い求めるアレックスと、穏やかで幸福な生活を望むサンニは、お互いの考え方を尊重しているが、人生の価値観がまったく異なっている。ふたりをよく知るトミーは、「彼らの関係は本当に素晴らしい。しかし危険なフリーソロには、感情に“鎧”がいる。恋愛感情はその鎧に悪影響を及ぼす。両立はできない」と懸念を抱いていた。それでも入念に準備を重ねたアレックスは、いよいよエル・キャピタンでのフリーソロ実行を決意する。ジミー率いる撮影隊も細心の注意を払い、アレックスの邪魔にならないようカメラポジションを決定していく。ところが夜明け前に始まったそのフリーソロは、呆気なく中止された。以前滑落したフリーブラストに差しかかったところで、アレックスが突然引き返してしまったのだ。ケガの影響なのか、精神的な問題によるものか、それとも大勢の撮影クルーの存在が気になったのか、理由は判然としない。かくして偉業への挑戦は翌年に持ち越された。

2017年、春
極限の恐怖にも動じない平常心を手に入れるために、アレックスはエル・キャピタンへの再挑戦に向けて黙々とリハーサルを重ねていく。アレックス、ジミー、サンニは、撮影がフリーソロに及ぼす影響について率直に意見をぶつけ合う。「周囲に人がいるなら、さらなる準備と自信がいる。自分が万全なら平然としていられるはずだ」と語るアレックス。そして6月3日の早朝、アレックスはひとり無言でエル・キャピタンへと歩を進めていく。それは人類史上最大とも呼ばれる歴史的な挑戦の始まりだった。

エルキャピタンとは
アメリカ合衆国カリフォルニア州、ヨセミテ国立公園内にあり花崗岩の一枚岩としては世界一を誇る大きさ(約975メートル)で、ロック・クライミングの聖地として知られている。その巨岩には数多くのクライミングルートが切り開かれており、世界各国からクライマーが訪れている。

今回アレックス・オノルドが挑んだのは、「フリーライダー」という主要ルートのひとつ。エル・キャピタンの壁は崩れやすく、難易度は高いと言われている。これに素手とシューズ、チョークバッグのみで挑む!

キャスト
アレックス・オノルド
1985年8月17日カリフォルニア州サクラメント生まれ。プロのロック・クライマーであり、アメリカ最大級の崖にて数々のフリーソロを大胆にこなし、世界で最も名が知られているクライマーのひとりである。才能もあるが努力家でもある彼は、目が眩むほどの高い崖をロープなしで制覇したことでも有名だが、その謙虚で控えめな性格でも有名である。彼の偉業は、ニュース番組「60ミニッツ」や米紙ニューヨークタイムズなどで取り上げられ、ナショナル ジオグラフィック誌のカバーを飾ったこともある。さらに、海外のコマーシャルに出演し、数々の探検番組にも出演している。2018年に初来日した際には、平山ユージ、中嶋徹と共に、クライミングセッションし話題となった。

サンニ・マッカンドレス
アレックスの恋人であり、彼の活動を影でサポートしているパートナー。アカデミー賞授賞式には一緒に登壇し監督のヴァサルヘリィから「あなたがいなければ、映画はつまらないものになっていた」とその存在を称えられた。

トミー・コールドウェル
1978年8月11日生まれ。アメリカのロック・クライマー/フリークライマー。ビッグウォールのフリークライミングからボルダリングまで幅広く手がける。ヨセミテ国立公園エル・キャピタンでもフリークライミングによる初登を数多く記録している。2015年1月には、ケビン・ジョージソンとともにエル・キャピタンのドーン・ウォールのフリー初登を成し遂げ、それに密着したドキュメンタリー映画「The Dawn Wall」(17/監督:ジョシュ・ローウェル、ピーター・モーティマー)公開され話題となった。またこの功績により、バラク・オバマアメリカ合衆国前大統領から祝福を受けた。アレックスの良き理解者であり、エル・キャピタンのフリーソロ成功の立役者のひとり。18年6月6日には、アレックスと共にヨセミテ国立公園のノーズのスピード記録の2時間切りを達成し話題となった。


制作陣からのメッセージ
エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ
監督・プロデューサー

「フリーソロ」は、極めて私的な物語です。私自身も伴侶がクライマーということで、クライミングを取り巻く人間の感情というものに興味がありました。この映画では、アレックスの内的な対話だけでなく、後に恋人となるサンニ・マッカンドレスとの間に芽生える恋愛関係を含め、家族や友達など、アレックスの個人的な人間関係をカメラに捕らえることが重要でした。サンニが、アレックスが冒す危険にどう対処するのか、アレックスが私生活と登山への野心のバランスをどうとるのかを描きたかったのです。アレックスとサンニのふたりの驚くほど率直なシーンは、いつまでも私の心に残り続けると思います。
映画の製作過程の途中の会話を入れるかどうか悩みましたが、最終的に、映画の製作過程そのものも、物語の中の重要な要素であるということが明らかになりました。毎日、リスクと映画製作における道徳的な問題と向き合う日々でしたから。主役のアレックスと、映画を撮る側のジミーと私との間のやり取りが常に繰り広げられていました。
でも、アレックスという人間は、決して異端児ではないと思います。彼は非常に整然としていて、彼のフリーソロ・クライミングが成功したのは、あの着実さがあったからこそだと思います。アレックスの物語は、向上心に溢れ、私に深く影響を与えました。私は、アレックスと関わる中で私の心に浮かんだ問いかけを、今度は観客に投げかけたかったのです。その問いかけとは、「もし、アレックスが恐れに直面しながらも、これを達成できるのであれば、私は自分自身の恐れを抱えながらも一体何ができるだろうか。人間の精神の限界とは、どこにあるのだろうか?」というものです。この映画では、こういった大きなテーマを扱いたかったのです。この映画は、私たちが日々、下している決断に意図的に目を向けさせ、私たちに「意味ある人生とはなんだろう?またそれはなぜだろう?」という問いを投げかけるのです。

ジミー・チン
監督・プロデューサー・撮影監督

フリーソロ・クライミングは、凄まじい集中力を要するスポーツです。自分をキャッチしてくれるような安全装置が全くないわけですから。簡単に言うと、完璧にこなさなければ、死を意味する。最もシンプルで、最も危険なクライミングスタイルなのです。あるのは、自分と岩のみ、ミスの余地は一切ないのです。アレックス・オノルドは、フリーソロに向けて綿密に計画を練るタイプで、彼には特別な才能があります。それは、「自分の恐怖を完璧に操ることができる」才能です。偉大なるアスリートたちは、プレッシャーの中でいかに能力を発揮できるか、という点で評価されます。常に「生きるか死ぬか」というリスクにさらされながら、一度に数時間もの間、完全なる平静さを保ちながら、完璧にやり遂げなければならない。これはとても凄いことだと思います。フリーソロイストになる人は、非常に難しい決断を迫られます。それはある意味、人が人生の中で下さなければいけない決断の中で最も苦しい決断かもしれません。自分の野心か家族/恋人か、リスクか報酬か――。
この映画を作るにあたって、僕はアレックスが、100%準備が整った時にだけ、エル・キャピタンのフリーソロを実行すると最初から信じるしかありませんでした。実際、「エル・キャピタンのフリーソロの準備が100%整った」と思える人間がいたということ自体、いまだに信じられません。プロの登山家が絶好調の日にロープを使って登っても落ちる可能性があるくらい難易度が高いからです。フリーライダーのクライミングは、非常に不安定で複雑で、超人間的な力と忍耐力以上のものが必要になってきます。非常に洗練された技術を使い、微妙な体位を保たなければならない。完全に摩擦の力だけで身体を支えなければならないこともあります。つまり、足を引っかける場所もなければ、手で捕まる場所もないということです。「完璧」でなければならない。そして、彼は完璧だったのです。


インタビュー|アレックス・オノルドQ:初めてエル・キャピタンを登った時はどのような感じでしたか?
A:本当に想像を超えた体験でした。以前、僕のパートナーと、そのシーズン内に「エル・キャピタンを1日で登りきる」という目標を掲げていたのです。フリー・クライミングではなく、どのような手段を使ってもとにかく頂上まで登りきる、というものでした。そのシーズンはずっと身体づくりに励んでいました。大きな冒険であり、大きな挑戦でした。23時間で、最も簡単なルートを辿って登りきりました。あの体験は、クライミングの新たな扉を開いてくれたと思います。

Q:エル・キャピタンでのフリーソロは、それに向けてこれまであなたが努力してきた究極の目標だったと仰っていましたよね。フリーソロをするためにエル・キャピタンに向かった朝、どのような気分でしたか?
A:特に何も考えていませんでした。当日、何も考えないでいいようにするための準備期間でもありましたから。考えることは、事前にさんざんやりました。当日の朝は、自動操縦のように、心を無にして、実行に移しただけです。いつもと違うところに車を停めたというのはありました。というのは、草原の中で誰とも会いたくないという気持ちがあったから。つまり、エル・キャピタンの長さを超えるトレイルを歩いていたということです。イースト・ウォール沿いをずっと歩きながら、「本当に大きな岩だな」と改めて思いました。心の準備ができていると確信していたし、その間に大きな実感が湧いてきたのです。

Q:映画の撮影が入るということで、いつもよりプレッシャーを感じることはありませんでしたか?
A:それはありません。色んな意味で、この映画の企画が実現することを願っていました。その撮影のおかげで、準備を始めるためにモチベーションを上げなければならなかったという意味で時間的なプレッシャーはありました。エル・キャピタンを登るというのは、もう何年もの間夢見ていたことだけど、余りにも困難で、大きすぎる夢のように思えたから、まだ行動に移していなかったのです。だからこそ、自分の背中を押してくれる何か余分の力が必要でした。僕の最大の恐怖は、一度もトライせずに人生を終えてしまうことです。「今年こそ、エル・キャピタンでソロをやるぞ」と言い続けてもう6、7年になります。でも、いざヨセミテへ行ってみると、「いや、今年じゃないな。トライさえもしない」と言って引き戻すというパターンを繰り返しやってきました。だから、具体的に努力して可能かどうかやってみるきっかけが必要だったのです。

Q:登っている時は何に集中しているのですか? よく下を見ますか? 地面からの距離の自覚はどれくらいありますか?
A:それは凄く意識しています。ああいう大きな壁を登る時は、地面から遠く離れているあの感覚が醍醐味なんです。それが僕にとって、クライミングの大きな魅力のひとつ。「下を見るのか?」って? もちろん下を見ますよ。実際に登っている時は、常に手や足の方を見ているけど、だからといって、必ずしも地面からの距離を意識しているというわけではありません。主に、僕は「登る」という行為を行っているだけなのです。

Q:その自信は、どこから来るのですか?
A:僕は、自信というのは、理性主義から来ていると考えています。客観的に現実を評価するという基本的な行動から来るのではないかと思います。「これは可能か」、と自分に問いかけ、もしその答えがイエスであれば、実行に移すだけ。ロープ有りの状態で何度も繰り返し成功しているということは、明らかに物理的には可能であるということだし、ロープなしでやれないわけがないのです。

Q:自分の今やっていることを踏まえて、運命をどうとらえていますか? おそらく、多くの人たちは、あなたのやっていることを見て、生と死の境にいるという印象を受けると思うのですが。
A:そう考えている人がいるとすれば、それが間違っていることを願いますね! でも、実際はわからない。僕は、何らかの宗教を信じたこともないし、スピリチュアルな人間でもない。運命というのはあまり信じないのです。僕は人生を、確率と可能性と現実という視点で見ています。運命について考えたことは全くありません。でも、人間は必ずいつか死を迎えるということについては考えるし、時間に限りがあるということは知っています。命には限りがあるということは十分に自覚しているつもりだし、だからこそ人生を最大限に生きて、できる限り挑戦し続けたい。クライミングでベストを尽くしたいという想いは、生きている時に限りがあるという考えに関係しているとは思いますね。

Q:なぜ、クライミングをするのですか?
A:それは、最高だからです。

二ヶ国語版|日本語 吹き替え声優
アレックス・オノルド役|鈴木 達央
【代表作品】
「ケンガンアシュラ」(十鬼蛇王馬役)
「Free!」シリーズ (橘真琴役)
「うたの☆プリンスさまっ♪」シリーズ (黒崎蘭丸役)
「七つの大罪」(バン役)
「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」(プロシュート役)
「ダーククリスタル:エイジ・オブ・レジスタンス」(リアン役)
「24 -TWENTY FOUR- レガシー」(エリック役)
「FINAL FANTASY XV」(ノクティス・ルシス・チェラム役)
ほか
サンニ・マッカンドレス役|白石 涼子
【代表作品】
「ハヤテのごとく!」シリーズ (綾崎ハヤテ役)
「BORUTO -ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」(秋道チョウチョウ役)
「蒼穹のファフナー」シリーズ (西尾里奈役)
「SKET DANCE」(鬼塚一愛/ヒメコ役)
「騎士竜戦隊リュウソウジャー」(クレオン役)
「シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ」(マイリー/ハンナ役)
「101匹わんちゃんストリート」(ドリー役)
「FINAL FANTASY 零式」(レム・トキミヤ役)
ほか

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