アドルフ・ヒトラー、サッダーム・フセイン、アウグスト・ピノチェト、モブツ・セセ・セコ、フィデル・カストロが、自らの進む道を権力に見出す過程を描く。暴力的で影響力を持つ人間が権力の座に就くのは簡単ではないが、彼らの通った道はよく似ている。経済危機に対して安定を求める世間の抗議を利用し、共通の敵を定め、政府を倒し、行動計画を推し進めた。苦境を打破するにはそれしかないと、独裁者になる者は主張するのだ。
独裁者は権力を握った途端、絶対的な権力を目指し、市民を黙らせ、役人に忠誠心を持たせるために恐怖やプロパガンダ、投獄や拷問、謀殺といった策を講じる。これは権力の座を強化するために必要な協力体制の構築にも役立つ。ヒトラーは民主主義的な制度を廃止し、フセインとモブツは力を誇示するために国際的な同盟を結ぶ。ラテンアメリカの独裁者たちは協力し合い、自国で独自の行動計画を推進するために軍国主義的な政権を作った。
独裁者は自分の手の届く範囲を超えると、外からの力が失墜の原因になる。ヒトラーにとっては、同盟国を陥れたことと二面戦争が終焉の始まりだった。南アメリカの独裁者の場合、人権侵害に国民が怒った。情報操作の失敗や軍事上の失策があったにしろ、独裁者は自身を取り巻く情況の犠牲になる。スターリンのように、この世を去るまで統治した独裁者はわずかだ。独裁者の死をもってしか、独裁政治を終わらせる術はないのだろうか。