セバスチャン・ユンガーが伝えるリアル
彼の初監督作品として知られる「レストレポ ~アフガニスタンで戦う兵士たちの記録~」。彼はこの作品で2010年度サンダンス映画祭のドキュメンタリー部門でグランプリを受賞している。ジャーナリスト、作家、監督とマルチな顔を持つ彼だが、その経歴は実に華やかだ。ジャーナリスト(記者)としてはピーボディ賞を受賞し、作家としては「パーフェクトストーム」でニューヨーク・タイムズからベスト セリング作家と称されている。彼の輝かしい経歴、この作品を見れば実に納得のいく評価だという事に頷かされる。反対に言えば、ここまで評価されている人間が作った作品だからこそ、見逃すわけにはいかないはずだ。
映画や小説よりも信じがたい事実
スクリーンを通して見ている映像のはずなのに、まるで自分が戦場に建つ家の中に居て、爆撃音を怯えながら聞いている。臨死体験と言っても過言では無いほどに、戦場の空気、湿気、そして火薬の臭いまでが感覚を刺激する番組だ。人々の不安、怒り、そして悲しみが、爆撃によって少し埃を被った大人と子供たちの肌から伝わってくる。台本は無く、全て事実のみを捉えているのに、映画や小説よりも信じがたく、あまりにも冷酷な現実を捉えているのはセバスチャン・ユンガーを通して現代(そして未来)が私達に発している警告かもしれない。