コロンビアの麻薬王、パブロ・エスコバル。最盛期には全世界のコカインの8割を支配したといわれ1989年にはフォーブス誌の資産家ランキングで7位なった男だ。敵対する者は大臣でも大統領候補でも暗殺する一方、巨額の私財を投じて貧困層のための住宅や学校を整備し地元では彼を慕う人々も少なくなかった。自らも暗殺の危険にさらされながら彼を追った捜査官や、何千人もの暗殺を指揮した元部下の証言から稀代の麻薬王の実像に迫る。
シュグ・ナイト。ロサンゼルスの南隣、全米有数の犯罪都市コンプトンの有望なフットボール選手だった彼は「デス・ロウ・レコード」を設立して成功。ストリートギャングたちの暴力的な日常を歌詞にしたギャングスタ・ラップの隆盛に大きな役割を果たした。だが自身もギャングの世界観の中で生きており、対立するスター歌手を殺害した疑いまであるほどだ。スターダムと暴力が一体となった世界で成功と没落を経験した男の半生に迫る。
20年以上にわたりイラクを支配した独裁者サダム・フセイン。政敵をテレビカメラの目の前で粛清し自国民を化学兵器で虐殺した冷酷な独裁者は、有名映画の主人公に憧れたり自らをアラブの英雄サラディンに重ね合わせたりする誇大妄想家でもあった。開戦前夜にインタビューしたアメリカ人ジャーナリスト、戦争で敵として戦った司令官、そしてフセインの「友人」となることを強要された家族の証言から、フセイン像を浮かび上がらせる。
ウラジーミル・プーチンは2000年に大統領に就任して以来、事実上一貫してロシアの最高権力者の座にあるが、元は決して政治エリートではなかった。退任後も自らの地位を保全してくれる後継者に悩むエリツィンの信任を得たことで一気にトップに登りつめた人物だ。彼は冷徹な現実主義でロシアを再興に導く強い政治家か、それとも政敵の暗殺もいとわない恐怖の独裁者か。プーチンを語る上で象徴的な数々の事件を当事者の証言からたどる。
世界一のボディービルダー、ハリウッドスター、そしてカリフォルニア州知事。アーノルド・シュワルツェネッガーは様々なジャンルで頂点を極めた。コミカルなCMなどでも知られる“シュワちゃん”には、あらゆる手を使って競争相手をねじ伏せる冷徹な策略家の顔もある。英語も不自由なままにオーストリアから移民し、アメリカンドリームをつかみ取ったシュワルツェネッガー。彼の根底にあるのは強い上昇志向と不屈のメンタルだ。
ドナルド・トランプ。億万長者の不動産王は今やテレビ番組の人気者でもある。自由や人権をないがしろにする数々の暴言にも関わらず、アメリカ人の不満を率直に代弁してくれるとして彼を信奉するファンは決して少なくない。一方で資産を実態より大きくみせることで「金持ちキャラ」を演出しているという証言もある。過激な言動は計算かそれとも素顔か。単なる実業家の枠を越えポップカルチャーのアイコンになった男の虚像と実像。