アメリカ人の精神を語る上で、西部開拓時代の野性味あふれる伝説は重要だ。しかし、太平洋沿岸地域に生息する動物たちにとっては、伝説的な過去が今なお残酷な現実として続いている。オールドウェストの象徴的な荒々しい姿は今でも自然界に実在する。ゾウアザラシは血を流すまで争い、アメリカクロクマはサケの群れ求め、ボブキャットは孤独にさまよっている。そこには開拓時代と変わらない荒涼とした世界が今でも広がっている。
西部地方の不毛の砂漠では、アメリカドクトカゲがゴーストタウンの大通りを練り歩き、モモアカノスリは群れを成してサボテンの間をぬい狩りをする。夜になれば共食いするサソリは砂丘ではさみを振り回しながら対決する。西部ではサボテンは良き友でもあり敵でもある。フクロウのすみかや、飢えたコヨーテたちのスナックにもなるサボテンだが、同時に生き物を殺したりもする。砂漠では植物さえも武装しているのだ。
ロッキー山脈の険しい峰々にすむ動物たちにとって、開拓時代の荒々しい伝説は残酷な現実だ。オールドウェストの野性味あふれる象徴的な姿は今でも動物たちの中にみてとれる。ここではオオカミの群れがヘラジカの子どもを捕食し、空の無法者がプレーリードッグたちを襲い、ハイイログマは食べ物を死にもの狂いで探し、ピューマは環境が厳しい山脈に負けないほど荒々しく生きている。ここには開拓時代の荒涼とした姿が息づいているのだ。