宇宙を知る~誕生から滅亡まで~ 宇宙を知る~誕生から滅亡まで~

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JAXA宇宙飛行士 油井亀美也 JAXA宇宙飛行士 油井亀美也
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油井亀美也

©JAXA/GCTC

油井亀美也

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ナショナル ジオグラフィックをご覧の皆様こんにちは。 JAXAの宇宙飛行士油井亀美也です。

私は小さい頃から宇宙に行くのが夢で、宇宙の事をたくさん知りたいと思っていたのですが、 宇宙に行って窓から星空を眺めると、地球が小さく見えるのに対比して宇宙の大きさを実感しました。 宇宙は無限の可能性を秘めており、そしてその無限の可能性にチャレンジしているんだな、 と思うようになりました。

私が国際宇宙ステーションに滞在した時のミッションのテーマは「挑む」でした。
困難に対して挑んで行く姿勢は非常に大切だと思っています。
宇宙開発あるいは宇宙の観測・研究の分野で非常にたくさんの困難があるのですが、それをひとつひとつ乗り越えて行くことによって人類の科学技術が発展し、地球上の生活が豊かになるとか、新しい宇宙の謎が解明できるとか、人類の活動の領域が広がっていくとか、様々な良い効果が得られると思っています。

ぜひとも、宇宙の事を、地球の事を好きになって欲しいな、と思います。

プロフィール
1970年
長野県に生まれる。
1992年3月
防衛大学校理工学専攻卒業。
1992年4月
防衛庁(現 防衛省)航空自衛隊入隊。
2008年12月
防衛省 航空幕僚監部に所属。
2009年2月
JAXAよりISSに搭乗する日本人宇宙飛行士の候補者として、大西卓哉とともに選抜される。
2009年4月
JAXA入社。
2009年4月
ISS搭乗宇宙飛行士候補者基礎訓練に参加。
2011年7月
同基礎訓練を修了。
2011年7月
ISS搭乗宇宙飛行士として認定される。
2012年6月
米国フロリダ州沖にある海底研究施設「アクエリアス」(当時、米国海洋大気庁(NOAA)の所管)における第16回NASA極限環境ミッション運用(NEEMO16)訓練に参加。
2012年9月
米国アラスカ州で実施されたNASAの野外リーダーシップ訓練(NOLS)に参加。
2012年10月
ISS第44次/第45次長期滞在クルーのフライトエンジニアに任命される。
インタビュー 宇宙は無限の可能性を秘めた、人類が行くべきところかな インタビュー 宇宙は無限の可能性を秘めた、人類が行くべきところかな
油井さんにとって宇宙とは、どんな存在ですか?
子供のころから宇宙に行って仕事をすることが夢でした。天体望遠鏡で星を見ていてその無限の広さを感じていました。無限の可能性を秘めた、人類が行くべきところかなという気持ちはいつも持っていました。
JAXAに所属されてからの7年で、一番わくわくしたことはどんなことですか?
ずっとわくわくしていたのは、地球や星の写真を撮っているときでした。長年宇宙に行くのが夢でしたし、そこから見える景色は非常にきれいで。当然メインのミッションとしては実験や何かがあって、いつも忙しく過ごしていましたが、空いている時間あるいは土日なんかは、もう地球に魅せられて、あるいは宇宙に輝く星に魅せられて、写真を撮るのが日課のようになっていました。わくわくしながら、その感動を伝えたいという一心でした。
JAXAの中でかつて9人、そして油井さんを筆頭に新世代の宇宙飛行士が生まれる中で思うことは?
私たち3人(油井、大西、金井)が2009年に新しい世代の宇宙飛行士として選ばれたのですが、その3人の中の先頭を行くということで、私自身の仕事がその後に続く3人のスタンダードになると思っていました。しっかり仕事をして、高いレベルでいろいろな国から信頼してもらえるような仕事をしたいと思っていました。
油井さんは今回、どのような気持ちで宇宙に飛び立ったのでしょうか?
日本人として宇宙に行ったのが10人目ということで、まだ日本人として宇宙にいく方が今は少ないのですが、これからは加速的に100人あるいは1000人目といえる日が来てほしいなと思っています。そのためには、日本が宇宙開発の分野でしっかりとした成果を出し、それが他の国に認められることが非常に大事だと思っているので、責任を感じながら、日本人のみなさんが宇宙に行けるための先駆けとして宇宙でいろんな仕事をしていこうと思っていました。
実際に宇宙へ行き、昨年(2015年)のソユーズ打ち上げ時には、何を感じましたか?
感動したのは地球の美しさですね。同時に、地球を取り囲んでいる大気の薄さに非常にびっくりしました。空気って地上にいるときは、無限にある気がしていたのですが、宇宙から見るとほんの少ししかなくて、しっかり守っていかないと地球の環境を壊してしまうのだろうなと感じました。
訓練したことっていうのは、自信をもってそのまま普通にできる 訓練したことっていうのは、自信をもってそのまま普通にできる
「きぼう」での研究はどのようなものですか?
「きぼう」ではさまざまな実験を行っているのですが、「きぼう」自体が少しずつ古くなっていっても、実は中の実験装置は、どんどんどんどん更新をして最新の実験機材が揃ってるんです。私はそこで、例えば小動物の実験については、全く新しい飼育装置を設置し、機能の確認をしました。そして大西さんには実際に使っていただいて、成果を残してもらうことになります。「きぼう」は非常に優れた機能を持っており、その能力を私たちがいかに100%引き出すかという責任を感じていました。
ミスできないですね!
そうなんですよ。これが非常に厳しいところで。実験装置を作るのにも、あるいはその実験を提案してから実際に軌道上で実験できるまで、かなり長い時間がかかるんです。たくさんの予算もかかっていますし、多くの人たちの気持ちが詰まっています。実験装置を扱うときは、そういう人たちを思い浮かべながら、実験者の人たちがどんなことを私にしてほしいと思っているのかというところを想像しながら、きめ細かい実験ができるように、ということを心がけていました。それもチームワークのひとつなのかなと思います。
ナショジオの番組『大宇宙(おおぞら)へ翔ける 油井亀美也とJAXA、新しい時代へ』の中で、「“こうのとり”で意外と冷静にいられた」とありましたが、正直なところはいかがですか?
練習しているだけあって落ち着いてる部分もあり、一方で非常に大きなプレッシャーを感じてもいました。以前もちょっと言ったことがあるんですけど、どのぐらいの難しさなのか、ゴルフをやるので例えますと、キャプチャーはほんとに、難しいことなのです。何度も何度も練習をして、確実に100%できるようにしてはいても、ゴルフの世界で、1mのパッドをほぼ確実に入れてくるプロが、優勝がかかったパッドだったり、プレッシャーに負けて外したりすることがあると思うんです。しかし、それは絶対に許されない。そのプレッシャーに打ち勝つため、強い意識で、強い気持ちを持って、ここまで練習したんだから大丈夫、他の人がここまで支えてくれたんだから大丈夫、という気持ちを力に落ち着いて実施できたということですかね。何か足りないところがあると不安に感じれば、うまくできなくなる可能性が増えてきちゃうんだという風に思います。
そのプレッシャーは、どのようなものなのか、心がえぐられるとか、、、?
そうですね、ドキドキして自分の体が自分のものじゃないような感じが極度の緊張になると起こります。今回に限らずいろいろなところでね、自衛隊にいるときもそういう緊張を感じることがありました。そこでできるのは訓練したことだけですね。訓練したことは、自信をもってそのまま普通にできるし、そうでない、そこまでいってないものはやはり失敗してしまう可能性があるということで、やはり訓練というのは大事だなと思っています。
例えばGで例えるとどれくらいのプレッシャーですか?
Gに耐えるほうが楽ですよ。自分で体を鍛えればいいので。F15の戦闘機ですと9Gかかります。それにかかる身体的なプレッシャーというよりは、やっぱり心にかかる重圧のほうが大きいですね。
「こうのとり」のキャプチャのとき、プレッシャーに負けなかった秘訣はなんですか?
自分はここまでやったんだという自信だと思います。キャプチャに行くまでの間っていうのは、これが起こったらどうしようかなとかどうなるんだろうって一部不安な部分があって、その不安を埋めるために一生懸命、その不安を取り除くために訓練をやるのですが、そこで真摯にその準備をした結果というのが、努力の結果は裏切らないので、自分が頑張ったというそのことが自信になって、気持ちに負けずにできるんだと思います。
人間というのは、もっと早く、もっと高く、もっと遠くへ、という本能みたいなものがあると思っています 人間というのは、もっと早く、もっと高く、もっと遠くへ、という本能みたいなものがあると思っています
地球に帰ってきて、ドアが開いた時に何を思いましたか?
冬だったので冷たい空気が入ってきたんです。それは寒いという感じではなくて心地よい感じでした。今までは人工的に作られた空気の流れの中で住んでいて、そこには慣れていたのですが、やっぱり地球の空気はとっても綺麗で新鮮だなと思いました。宇宙船の中の二酸化炭素の濃度はかなり高く、それを取り除くのは結構大変なんです。人間の具合が悪くならないギリギリのところでやっているのですが、地球では植物がしっかり頑張ってくれて二酸化炭素の濃度がぐっと低いので、空気がおいしいなと感じました。
地球に帰ってきて、宇宙に行く前と帰ってきてからで何か変わったことはありますか?
訓練のときも感じていたのですが、人類はさまざまな問題があったとしても一つの大きな目標に向かって協力できる、協力すれば大きなことが成し遂げられるということがわかった気がします。実感として、国際宇宙ステーションは人間が作った中で一番複雑で難しいそのテクノロジーの塊みたいなものだと思うのですが、アメリカもロシアも、日本も、ヨーロッパの国々も、みんなで協力して作り上げたというその事実がすごいなと思いましたし、そういうことが宇宙開発に限らず、いろんなところでできるのではないかと思いました。
今回のミッションで感じた達成感は?
日本の技術の力を見せることができたと、本当に感じています。特に、「こうのとり」のキャプチャの成功は、それまでロシアやアメリカで無人輸送船の失敗が続いて物不足に陥った国際宇宙ステーションを、日本の技術、日本のチームワークで救うことができたということで、すごく大きな達成感がありました。
宇宙飛行士としてミッションは達成した?
第1段階としては達成したと思っています。まず宇宙に行って、国際宇宙ステーションでしっかりと仕事をして、実験の成果を残すということはできたと思っていますが、まだ仕事はいっぱいあります。大西さんのミッションのサポートもありますし、金井さんのミッションのサポートがあって、その新しい世代の飛行士の力を見せるという希望もあります。さらに人間というのは、もっと早く、もっと高く、もっと遠くへ、という本能みたいなものがあると思っていまして、私自身もっと遠くに行って国際宇宙ステーションだけじゃなく、さらに遠くに行って仕事をしたいという希望はあります。
遠いところとは、具体的にどこでしょうか?
次の目標として、よく私が例えるのは、亀美也のキは亀ですが、日本では月にうさぎがいるという風に信じられていて、私が月に行っただけだとその月がゴールということになります。うさぎと亀の競争で亀がうさぎに勝ったということにならないですよね。うさぎが先に到着していることになっちゃいます。やっぱり月より遠くに行きたいなと思っています。少しでも月より遠くに行きたいなと。
ブラックホールの時空を超えてみたい!とか。
まあとりあえずは、小惑星あるいは火星とかね(笑)。
宇宙空間やほかの惑星に定住することは、一般の人たちにとっても現実的なことなのでしょうか?
わたしは現実的なことだと思っています。国際宇宙ステーションに5ヶ月弱滞在して感じました。水や空気を再生し、太陽電池のエネルギーを使って、人が宇宙に住むための環境をつくることができる技術を人間は持っています。実際、国際宇宙ステーションでは風船のようなものを膨らませて、そこに人が住めないかという実験も始まります。あるいはアメリカの民間会社が手軽に誰もが宇宙を旅行できるような乗り物を開発しています。人間が手軽に宇宙に行ったり、住んだり、ホテルに滞在できる時代は近づいてきていると思います。
人間がしっかりと自分たちを律していかないと地球環境は壊れる、それほど脆いものだと感じました 人間がしっかりと自分たちを律していかないと地球環境は壊れる、それほど脆いものだと感じました
今後私たちはどういうことに興味を持ち、どんな姿勢で今を生きていくのがよいでしょう?
人間はいろんなことができるんだ、ということが私が宇宙へ行って知った、感じた一番大きなことです。あと、宇宙に行って感じたのはその大気の層の薄さです。人間が何も考えず、自分の活動に関して責任を持たずにいると、温暖化ガスなどをどんどん排出して地球の環境を壊していく可能性があるということです。チベットの氷河の写真を撮ろうとして、そのあまりの少なさに驚きました。人間がしっかりと自分たちを律していかないと地球環境は壊れる、それほど脆いものなのだと感じました。一方で、普通なら人が住めない宇宙に、人類は長い間水や空気を再生し、温度もしっかりとコントロールをして住める環境を作っています。その人間の科学技術の力は素晴らしいものがあると思っています。各国が優れたところを協力しあって大きな目標に向かえば、今ISSで使っている水や空気の再生技術などを使って、地球の環境を汚さないどころかさらに綺麗にしていくことも可能かもしれません。人間の可能性をみなさんには知ってほしいです。そしてみんなで協力をして、その一つの大きな目標に向かって、素晴らしい未来を作ってほしいなと思っています。
日本の宇宙技術が向かう先をどう考えていますか?
日本は宇宙開発ができる予算もあり技術もあり、他の国々からその文化や歴史、技術も含めてですが、いろんな国から頼りにされているというのを感じました。日本の優れた科学技術を使って、宇宙開発に限らず、地球の明るい未来のために平和的に使ってもらえればと思っています。それによっていろんな国から人類や地球の将来に日本はなくてはならないと認められて、さらに尊敬されるような国になってほしいと思っています。