南アフリカのトラの谷では求愛の時期。トラ愛好家でありフィルムメーカーでもあるジョン“JV” ヴァーティが非常に珍しくて迫力のある映像を見せてくれる。4頭の成体が交尾する時期が来たのだ。ヴァーティは以前から谷にいたロンとジュリーと、最近到着したシータオとシャドウをマッチングさせる。トラの交尾の儀式は力強く、ドラマチック。精力的で暴力的な場合も多いが、感動的でユーモラスな面もある。2組の交尾は成功し、ジュリーとシャドウは妊娠する。3ヵ月以上が過ぎ、2頭のメスは24時間違いで出産する。JVはシャドウの巣穴から、かつて映像で捉えられたことのないトラの出産の瞬間を撮影する。シャドウは4匹、ジュリーは珍しい白色の赤ちゃんを含めて3匹を出産した。JVの願いは新しい世代が母親に育てられ、野生のトラとして成長すること。しかし意気揚々とした彼にも不安がある。“これからが勝負どころ”と彼は話す。“2頭の母親は赤ちゃんを育てることができるのか?経験や心構えはあるのか?時間がたってみないと分からない”。
24時間のうちに、トラの谷の頭数が一気に増えた。7匹の赤ちゃんが誕生したのだ。シャドウが4匹、ジョン“JV” ヴァーティのお気に入りのジュリーは3匹出産した。その上ジュリーが出産した1匹は、遺伝子の異常による珍しい白色だった。しかし出産に喜ぶJVに突きつけられたのは、トラの世界の厳しい現実。赤ちゃんを見にシャドウの巣穴を訪れると、1匹死んでいたのだ。悲しい出来事だが、珍しくはない。トラの赤ちゃんのほとんどが育たないのだ。悲しみにもめげずに立派に母親業をこなすシャドウ。シャドウなら人の手を借りずに子育てができると、JVは判断する。しかしジュリーはその反対だった。ジュリーは毛づくろいや授乳を怠ることが多く、JVは初めから心配していた。2匹の赤ちゃんが巣穴から出て川に入ってしまい、彼が救ったことさえあった。そして1日もたたないうちに、恐れていた展開に。ジュリーが子育てを放棄したのだ。彼は難しい決断を迫られる。赤ちゃんを人間の手で育てるのは、野生のトラの群れを作るという目標に反する。しかし彼が介入しなければ赤ちゃんたちは確実に死んでしまうのだ。
トラの谷の頭数が徐々に増え、ジョン"JV" ヴァーティは父親のように喜ぶ。彼のお気に入りのトラ、ジュリーは再び出産を控えていた。前回の出産で育児放棄してから8ヵ月後のことである。JVにとって、今回の妊娠はトラの谷を作るにあたり重要だった。しかし、育児放棄された赤ちゃんトラを自分の手で育てているJVは、ジュリーが今回も放棄するのではと心配する。人の世話を必要としない野生のトラを育てるという彼の目標が遠ざかるのだ。しかし赤ちゃんが生まれると、彼の心配は無駄に終わる。一度に5匹も出産したにもかかわらず、ジュリーは赤ちゃんの面倒を見る準備ができていた。しかし数週間以内に新たな問題が発生する。1匹が他の赤ちゃんよりも体が小さいのだ。“ランティ”というニックネームのその赤ちゃんは、日に日に弱っていった。さらに悪いことに、ジュリーは別のメス、シャドウとケンカして重傷を負ってしまう。ジュリーがゆっくりと回復する中、ランティは急速に衰弱していく。JVは今までの仕事の中で最も難しい決断を下すこととなる。ランティを母親や兄弟のいる野生から引き離すべきか。それともどんなことがあろうと、自然に成り行きを任せるべきか?